2009年1月27日 15:40
■司会/進行
デジタルハリウッド大学大学院 大阪キャンパス 専任教授 兼 セカンドライフ大阪研究室室長 栩木 雅典 氏
■パネリスト (五十音順)
株式会社インスパイア 代表取締役 中谷 淳 氏
コア・ディメンション株式会社 代表取締役 髙野 博史 氏
株式会社デジアサ 総括マネージャー 川崎 正規 氏
電鉄商事株式会社 開発部 DTSコミュニケーションズ デザイナー 木内 健太郎 氏
【栩木氏】 はじめまして、デジタルハリウッド大学大学院の大阪キャンパスで、セカンドライフ研究室をやっております栩木(とちき)と申します。セカンドライフやゲーム会社が運営しているものなど、現在、多くの3D仮想空間サービスが世界中にございます。これらの中で実際にビジネスに結びつくものは一部となると思いますが、一番ビジネスがなされているのは、やはりセカンドライフだと思います。パネリストの皆様には、3D空間・3D技術における自社の取り組みや事例、とくにセカンドライフ(以下、SLと表記)関連やブラウザ上での3D表示などのお話をお聞きしたいと思います。
では最初に、コア・ディメンション株式会社の髙野(こうの)さんよりブラウザ上での3D技術についてお話いただきたいと思います。
【髙野氏】 まず弊社のご紹介として、最近では、「Open Sim(オープンシム) 」のホスティングサービスをはじめたのと、他には「Vitty(ヴィッティ) 」というSLのアイテム販売仲介サイトも運営しております。さて、今回はこれらとは別のサービスをご紹介します。
WEBサイトのエンゲージメントを高めるという言葉を、皆様よく耳にするかと思います。関係や絆、WEBサイトとユーザーの繋がりをどう深めるかということですが、これを実現するひとつの方法として「SceneCaster(シーンキャスター)」(「IMMERSIV(イマーシヴ)」という名前でも出ておりますが)という仕組みをご紹介します。これは、カナダのView22 Technology Inc.という会社で開発されたものでして、弊社と事業提携し、販売しております。これは何かと言いますと、SceneCaster.comというサイトがございまして、グラフィックカード搭載のPCを必要とせず、どなたでも簡単にドラッグ&ドロップで3D空間を作成できるものです。FacebookやFriendsterなどのSNSでもこのエンジンはすごく使われております。ユーザー推移の方も、Facebookに入れたのが効いたのだと思いますが、1年も立たないうちに200万人に達しております。You Tubeは動画の共有サイトですが、これは3Dシーンの共有サイトという形になります。
これはバーチャルワールドなのかという質問をよく受けます。3次元空間ではあるが、少し違います。「SceneCaster」というのは、メタバースやSNSと比べた時に、SNSに近いもので、アバターやチャットもないです。コミュニケーションの形体も、SLなどのメタバースでは、時間も空間も全員共有する同期型ですが、これは非同期でコミュニケーションを行います。メタバースといわれるバーチャルワールドとは一線を画しているものですね。

実際にみていただきますと世界中のユーザーが3Dシーンを作り、共有しており、ここにコメントなどを書き込んでコミュニケーションを行っております。このようなものは他にもありますがそれらとの違いといいますと、3D空間内のあらゆるオブジェクトにURLリンクを張ることが出来ます。それで何が出来るかと言うと、データベースとの連携やECサイトでの活用が出来ます。例えば、アマゾンやイーベイなどのリンクを貼り、空間内のオブジェクトを買うことができます。
簡単にドラッグ&ドロップで作ることが出来、自分のシーンや部屋を作ることができます。それを公開することができ、この仕組みが「SceneCaster」といいます。ここまでは、「SceneCaster」のご説明でしたが、このエンジンをすべてのWEBサイトで利用したいという要望が多くの企業から寄せられておりまして、それで出来たのが「SceneCaster BUSINESS」というものでして、すべてのWEBサイトに埋め込みましょうというものです。
【栩木氏】 今後、普及していくとブラウザそのもので見る製品紹介などにも使われていきそうですね。
【髙野氏】 はい、おかげさまでお話させてもらうと結構好評ですね。やっぱりメタバースやSLはすごい技術ですし、今後うまくいくシステムだと思いますが、ただ現実問題としてPCスペックなどの問題が大きいですね。
【栩木氏】 実際に、SLをインストールしてみたが、グラフィックボードがないので動かないということもありましたよね。そのような問題が解決しますと、一気にビジネスへの活用がなされますね。
【髙野氏】 そうですね。
【栩木氏】 昔では、WEB3Dという表現がなされていてショックウェーブ3D、カルト3Dと呼ばれておりましたが、それらとはどのような違いがあるのでしょうか。
【髙野氏】 例えば、シーンひとつ作るにしても、全部、3DCADのファイルを直接インポートできるところですかね。
【栩木氏】 それはすごく便利ですね。今までは特別なプラグインが必要でしたしね。
【髙野氏】 あとは、絵ではないので、オブジェクトがそれぞれ独立しているので、ひとつひとつ変更を加えることができるところですね。
【栩木氏】 さまざまな応用分野に広がっていくものですので、今後も注目していきたいですね。このあとSL内での事例紹介などをしていただきたいと思います。いろいろな取り組みをされておりますので、そのあたりを順にご紹介いただきたいと思います。
それではまず、電鉄商事株式会社DTSコミュニケーションズの木内(きない)さんよろしくお願いします。
【木内氏】 私の方からは、SL内での取り組みをご紹介させていただきます。
【栩木氏】 その前に会社名を見て、なぜ電鉄なのかという疑問がでるのですが・・・
【木内氏】 本社が東京にあり、WEBの制作は神戸にございます。新しいことをということで、SLに取り組んでおり、会社が神戸にあるということで、神戸をモデルに活動しております。ご紹介させていただくのが、防災神戸というSIM(島)なのですが、ここではSLの中からさまざまな防災情報を発信していこうということで、SIM作りをしております。主な活動内容としては、1月17日に阪神淡路大震災の防災の集いという活動を行いまして、SLの中で亡くなられた方々への追悼を行いたいという方々にSL内で多く集まっていただき、この中で当時の風景を写真として紹介しております。
神戸では毎年1月17日に東遊園地という所で、防災の集いというイベントをしております。遠方にいる方はなかなか参加できないので、SLの中でテレポートしていただき、参加いただいております。また、建物を建てるだけではなく、様々なイベントを行っておりまして、献花システムを作り、川に花を投げ入れ、追悼の気持ちを表すものも行っております。来年(2009年)には、様々な防災情報を紹介するものを考えておりますし、SLだけではなく、WEBサイトと連動させて、情報を発信していきたいと思います。

今年も防災神戸「1.17防災の集い」を2009年1月17に実施 >>>こちら
【栩木氏】 遠方の方がリアルのイベントに参加するのは、難しいので、このようにバーチャル空間で参加することが多くなりそうですね。このようなことは他に行われていたりするのでしょうか。
【木内氏】 内閣府が、同じようなイベントをされておりまして、バーチャル空間で音声チャットを使って、防災についての様々な議論を行っているというのは聞きました。
【栩木氏】 ここからビジネスに繋げていければいいですね。
【木内氏】 そうですね
【栩木氏】 次は、株式会社インスパイアの中谷さんにSLでの事例をお聞きします。中谷さんは主に京都や大阪で活動されておりますが、なぜか伊賀でも仕事されてますね。SLの中では世界中で話題になった伊賀の忍者村の活動をお聞かせいただきたいと思います。
【中谷氏】 まず、SLですが、日本で報道バブルと言いますか、2007年の4月から6月ぐらいまで、メディアで一気に取り上げられましたが、当時は、残念ながら日本でも始まったばかりで、なおかつ日本人クリエイターも少ないという現状で、なかなかいいコンテンツがありませんでした。そのころのSLをご覧になってイマイチだなと感じた方も多かったというのが現実ですね。しかしここ1年、とくに2008年からは優れたコンテンツがたくさん出来てきまして、また、ビジネスにつながるマーケティングやプロモーション方法などもかなり研究が進んでおり、どのようにバーチャルワールドをビジネスに活用できるかという部分が進歩してきています。
3つ程、私が行っている事例をご紹介します。まず一つ目が、伊賀上野観光協会から依頼を受けました伊賀忍者ですが、SLの中で忍者屋敷を建設し、世界中から忍者の体験ができるようにしてほしいということで作りました。併せて、当時は10年前に出来たWEBサイトしかなく、こちらもセットでリニューアル制作し、現在はSL&WEBで総合的にプロモーションを行っております。
まず、SL内の伊賀忍者屋敷のプロモーションビデオをマシニマという技術を使い作成しまして、You Tubeやニコニコ動画などで公開いたしました。
伊賀忍者の里 プロモーションムービー >>こちら
このマシニマという技術は、バーチャルワールド上の構造物を使って映画やプロモーションビデオを作るものでして、現在は多くの映画にマシニマが活用されています。そしてこの伊賀忍者のマシニマPVが、You Tubeやニコニコ動画を通じて多くの方に見られておりまして、世界中からサイトにアクセスがあり、各国のSLユーザーがSL忍者屋敷に来られおり、その結果、ウェブサイトとSLの両方で数字が伸びております。SLには100ヵ国ぐらいのユーザーがおり、まさに世界中から伊賀忍者のSIMに来ており、実に様々な言語での会話が飛び交っている状況で、伊賀の観光協会が持っていた「世界中に忍者を発信したい」という狙いにたいへんマッチした取り組みとなっています。伊賀市には実際に忍者軍団がいまして、海外公演のオファーが結構増えております。観光協会としては、実際に派遣すると同時に、各国でマーケティングを展開し、今後、SLやWEB、ブログを絡めて、グッズ販売などの展開を世界中に向けて行いたいわけですが、今までは出来なかった海外へのプロモーション活動が、SLを活用して世界中にPRすることによっておおいに可能性が見えてきました。
さらに現在、SL伊賀上野城を制作中で、中にある博物館などの案内から、現地への観光にもつなげていければと思います。また、城下町も制作予定で、実際に地域の再開発のモデルになるようなものを先にSL内で制作シミュレーションし、有効性を検証しようという試みを行っております。これはバーチャル空間ならではの取り組みだと思います。
2つ目ですが、SL上で京都の産官学連携を行っておりまして、平安神宮の庭園・神泉苑など、建物の一部を再現しました。実際に平安神宮の庭で毎年、紅しだれコンサートが行われており、それのSL版をやろうということで企画制作を行い、SL内バンドやDJを招いてコンサートを開きました。リアルイベントと同じものをSLで再現し、リアルとバーチャルの融合という新しいイベントプロデュースの仕方というのを実験しております。また、文化遺産はおおむね保存が難しく、外国から見に行くのも難しいですが、SL上ではすぐにアクセスしたり体験したりすることができますから、仮想空間上でのこのような取り組みは有効だと思います。
3つ目は、京都に八ッ橋で有名な「おたべ」という和菓子がありますが、SL上でおたべのキャラクター「おたべちゃん」を作り、プロモーションを行っております。狙いとしては、若い世代の方々により多く認知を広げたり、八つ橋以外にも様々な種類の人気商品が出ていますので、SL上でマーケティングリサーチを行おうということです。10種類のおたべ商品パネルを、イベントの参加者にクリックで選んでいただきまして、データが取れるような形にしました。イベントをするだけでも、リリースが記事になりやすいですし、「THE SECOND TIMES」という3Dインターネットのポータルサイトで取り上げられ、それがGoogleニュースに掲載されたり、イベントに参加したり記事を見たユーザーたちがSLのおたべ画像や動画を自身のブログで紹介し、クチコミ効果を生むことができます。
最近では、いろいろな企業や、官公庁、大学などが、バーチャルワールドを使って何が出来るのか?という細かい研究が進んでおりまして、良いコンテンツやサービスも非常に増えてきております。
【栩木氏】 これらのお話をお聞きすると、今後はさらに、実質的なマーケティングに活用できるのではないかと感じますね。
つぎは株式会社デジアサの川崎さんにお聞きしたいと思います。SL内でSIMを放送局としてお持ちになってどのような活動をしているのかをお聞きしたいと思います。
【川崎氏】 弊社は、朝日放送のコンテンツの制作やサービス運用を行っております。ここで、SLを使ってみてどうだったかというお話をしたいと思います。
実際にはじめたのが平成19年12月ですが、4つのSIMを平成19年8月に確保しました。何をしようかというところで、まず営業企画の「ショートムービーCMグランプリ」と連動した展開でスタートしました。平成20年の6月に朝日放送の新社屋が出来ましたので、SL上で先に新社屋を建てましてご紹介しました。「ショートムービーCMグランプリ」というものも今年も展開しております。
ご説明の前に、なぜ放送局がSLをはじめようかと思ったかというと、放送局には番組ごとのサイトを持っていまして、朝日放送でも山ほどサイトがあり、それぞれの番組に合わせたテイストでWEBが作られております。昨年SLが騒がれていた時期に、この先3Dでのコミュニケーションが一般的になるのなら、番組サイトはどのようになっていくのかというところで、一回やってみようという風な感じで始めました。当時、始める前の想定では、ドラマやクイズ番組のセットを作ったり、出演者と面と向かってコミュニケーションをとるのは難しいが、アバター同士ならできるのではないか。また、お金が稼げるビジネスができる使い方、CMなどの営業の販促ツールとして出来ないかということも考えました。SL上でのイベントの参加者にスポンサーのCMやグッズ配布やスポンサーのオブジェクトを作成し、スポンサーのサイトへ誘導できないかなどを考えておりました。とは言うものの、本音のところは、去年の春から夏にかけて各メディアがSLを取り上げていましたので、『日本で初めて放送局が』というところを狙っておりましたが、グズグズしている間に日テレさんに抜かれて、"最初"はダメでしたが、ネットや新聞などで取り上げられるパブリシティ効果としては、去年の冬でもある程度あったかなと思います。
実際にやったのが、「ショートムービーCMグランプリ 」という企画があり、それと連動してSLの中でも展開していくというものです。賞金総額150万円ということで、視聴者ならだれでも、プロでもアマチュアでも結構なのですが、スポンサー10社の中から課題の商品を選んでいただいて、そのCMを15秒・30秒で作成いただき、応募していただきます。審査をし、優秀なものには賞を差し上げますというもので、グランプリには賞金50万円とフランス旅行が与えられます。この企画の目玉となるのは、グランプリになりますとカンヌの広告祭に応募するというものです。また、10社ありますので、全部で10点優秀賞があることになりまして、朝日放送で課題の企業のCMとしてTVで流れます。今年は2月8日まで募集を行っております。
そこでSL上で何をしたかというと、映像でもアニメでも結構なのですが、簡単に制作できる環境を提供しようと、SL内にブルーバックのスタジオを建てました。ここでは3Dで簡単にものを作ることが出来、実際の写真の合成なども出来ます。もう一つスポンサー的なメリットとして、動画を公開するホールを作りまして、優秀作品の上映を行い、そこに協賛スポンサーのロゴを提示しております。企業のロゴをクリックすると各スポンサーがどのような課題かというサイトに飛ぶというようになっております。
前回では、応募数の中でSLを使ったと思われる作品は8%程ございました。これは、なかなかすごい数字だと感じています。ただ、残念ながら優秀作に選ばれたものはなかったです。あと、この企画に関して、いろいろなところで取り上げられまして、「THE SECOND TIMES」で「バーチャルワールドオブザイヤー」の話題部門にノミネートされました。
また、CMグランプリの募集と同時にはじめたのですが、隣にある「ASAHI島」全体をサウンドボックスとして使用してくださいということを行っております。わりとSLでは太っ腹な企画だと思うのですが、この中で様々な人がいろいろなものを作っています。ここで作ったものをCMグランプリの作成に活用いただければと思います。また、CMグランプリの期間中、たくさんの人に来ていただきたいので、キャンピング(一定時間いるとリンデンドルがもらえるというもの)を行っておりまして、そのおかげで、前回の期間中日本のSIMの中で一番賑わっているSIMとなりました。一日平均300人、ホームページの感覚でいうと少ない感じを受けますが、ひとつのSIMに入る人数が限られた中で、これだけの人が、しかも平均103分、リピーター率も63%というのを考えると、このSLの中では、がっちりとユーザーをつかんでいたと考えております。
話は変わりまして、平成20年6月23日にABCが新社屋に引っ越しをしましたが、数日前からリアルスケールでSL内で公開しました。これは、新社屋のPRが目的だったのですが、朝日放送に"キュキュ"というキャラクターがございまして、このキャラクターに乗って新社屋を案内してくれる"キュキュライド"というサービスも行っております。
ざっと今までの取り込みのご紹介でしたが、SLをやってどうだったかという感想を申しますと、双方向・PRのツールとしては、使い勝手はまだまだ発展途上なのかなと思います。WEBページのようにすぐ出来るものではなく、やはり制作期間が必要であり、それなりにコストがかかるという点、また当初考えていたよりもアバターとはいえ、肖像権がややこしいというものを感じます。
"キュキュ"というのは四角いサイコロのような形をしていながら、2Dでしか考えていなかったので、3Dにする工程が意外と難しかったです。まだまだ3Dでの表現は難しいと感じました。放送局という立場上、どうしてもすべての人に提供するという強迫観念みたいなものがございまして、"SLとは何か"という説明が必ず必要なことやハード的な問題もあると思います。
広告効果というところでは、SLを使ってマスメディア的に広く行うことは難しいですが、限られた方ではあるものの、長時間こちらから接触でき、繰り返し何かを伝えていくことが出来るということで、新たな広告効果を見いだせるのではないかと考えております。あと最後に映像コンテンツの可能性として、これは会社としての取り組みではないのですが、SLの中だけで映画を撮るという取り組みも行われており、放送局としてこのような可能性も見守っていきたいと思っております。
【栩木氏】 マシネマやSLでの映画制作というのは、今後新しい分野でおもしろいものだと思います。最近、ハリウッドで作られた映画のメイキングを見たのですが、実際に俳優が演じている所も、アバターを用意して、CGで事前につくっており、それを元に撮影を行うということが行われているみたいです。今後はいろいろな人が映像の制作を共有するという意味で、SLを活用するやり方は非常におもしろい可能性があると感じています。
3D技術は新しい分野と言いながら、結構前から3DiやWEB上での3D表現などはありましたが、なかなか3Dというものを扱うのが難しくPCにも制約があったように思います。しかし、徐々に垣根もなくなってきて、インフラも整ってきていますので、今後簡単に作れるようになると世の中も変わってくるのではないかと思います。
皆様、貴重なお話をありがとうございました。
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